吉原遊郭跡散策ツアー

吉原遊廓散策ツアー

一挙に冬の寒さが到来し小雨(氷雨)の降る10月25日土曜日、船橋稲門会エナジー(女性の会)主催の吉原遊廓散策ツアーに参加しました。
参加者は、船橋・八千代・佐倉・印西・柏の9名に案内人の黒沢永紀さんを加えた10名、さくらとらむ三ノ輪橋駅から浅草までの4時間近いそぞろ歩きを楽しみました。

午後1時半に三ノ輪橋駅前に集合し、まずは昭和の匂いがする「ジョイフル三ノ輪(三ノ輪銀座商店街)」をぶらぶらと。
昔ながらのコロッケやハムカツを売っている肉屋、人が群がっている惣菜屋、小さなパン屋(ここで食パンを購入した方も)、10円レタスなど激安の八百屋、銭湯など・・・キョロキョロと冷やかしながら商店街を楽しみました。ツアーの帰りだったら絶対にあれもこれもと買い物三昧だったでしょう。また行きます!
そして、黒沢さんのオススメは、蕎麦屋「砂場総本家」です。まさに昭和レトロな佇まいで、調べると「江戸時代から続く蕎麦屋の老舗。江戸そばの老舗の系譜では『のれん御三家』と云われ、薮、更科と、この砂場がある。現在の店主は14代目。蕎麦の実の中心部のみを使った細く白い蕎麦が特徴。1954年に建てられた総ヒノキ造りの建物は船底天井など当時の技術を知ることができ研究者も訪れる。」だそうです。

三ノ輪橋駅と都電

ジョイフル三ノ輪の入口

アーケードの中をぶらぶら

激安の八百屋さん

昔懐かしの銭湯

東京3大蕎麦屋の砂場

さて、そこそこ商店街を楽しんでからツアーの始まり、先ずは吉原の遊女たちが葬られている浄閑寺(投込寺)です。
ここに葬られている遊女の多くは20代で、人数は2万人を超えると言われています。荒川区指定文化財の山門をくぐり、寛政5年(1793年)に建立された「吉原供養塔」を参拝。塔の基部には花又花酔の句「生まれては苦界、死しては浄閑寺」が刻まれています。
供養塔の向かいには永井荷風文学碑が・・荷風は浄閑寺をたびたび訪れてここに埋葬されたがっていたけれど、家柄が良すぎて無理だったとの説明でした。

浄閑寺の由来書

花又花酔の句

永井荷風文学碑

 

吉原供養塔

 

日本堤の土手通りを吉原に向かって歩いていくと、明日のジョーの等身大フィギュアが立っています。この辺りが、「丹下拳闘クラブ」のあった通称「三谷ドヤ街」だそうですが、その面影はありません。
通りの向こう側の昭和の看板建物の出桁造りと切妻造りの屋根の形の違いなどの説明を受けながら吉原大手門を目指しました。

大手門手前の日本堤の土手沿いにあたるところに老舗の天ぷら屋「土手の伊勢屋」があります。関東大震災で全壊して建て変えられましたが、東京大空襲の被害は奇跡的に免れ、現在は区の登録有形文化財に指定されています。ランチの営業のみで、ちょうどお店の方が暖簾を下げるところでした。

矢吹ジョー

土手の伊勢屋

そして吉原の入口大手門、看板の立っているところより少し手前の交番の角が本来の門だったそうです。蔦重の店は大手門を入って直ぐのS字にカーブした50軒道沿い、現在大手門看板の立っているところ辺りでしょうか?。大手門に向かって右には遊女が逃げないように掘られたという「お歯黒どぶ」を埋め立てた道路が真っ直ぐ続いています。江戸時代の遺構のお歯黒どぶの石積み横を登って吉原の街中へ。まずは老舗?ソープランドの角海老(現在休業中)の建物に昔の遊郭の煌びやかさを見ます。
そして、黒沢さんの語る江戸時代から明治、大正、戦後の赤線まで続く遊廓吉原の歴史や花魁の話を聞きながら、吉原の路地を進みます。

吉原の道路は枡目状(盛土をして整備)で、通り毎に江戸町や京町などの名前がついています。街が北に45度傾いた形になっているのは、どの部屋で寝ても北枕にならないようにしているからだそうです。しかし、どこの路地もソープランドの風俗店が立ち並ぶ歓楽街、カフェという名前でも女性を選ぶ店で喫茶店ではありません(笑)夜は絶対に一人では歩けませんね。
赤線時代の建物がいくつか残っていて、それらは警察からの指導で一般住宅と区別するためにカフェー建築というR状の角や壁の装飾など少し変わった外装を施さなければならなかった、などの説明を聞きながらツアーも終盤に。

45度に傾いた吉原の町

大手門跡

お歯黒どぶ跡

お歯黒どぶの石積み

 

角海老

カフェー建築

 

最後に、ある意味今回のツアーの目玉である「耕書堂」でお土産を見繕い、さらに浅草まで歩いて雷門近くのお店で懇親会、友好を深めました。ちなみに耕書堂は「べらぼう」終了後は閉店するそうです。

 
 

べらぼうが田沼時代からの江戸の話のため、吉原というと江戸の風情やロマンを感じる街かとおもいきや、実際は戦後まで、いや現在も延々と続いている東京を代表する歓楽街だということを改めて知ったツアーでした。
ツアーを企画していただいた船橋稲門会エナジーの橋本さん、佐藤さん、ありがとうございました。

黒沢永紀(くろさわ・ひさき)氏

都市探検家・軍艦島伝道師・著述家・音楽家・映像プロデューサー
東京生育住。早稲田大学卒業。
21世紀初頭に訪れた軍艦島に感銘を受け、以来永年の研究と取材の成果を多数の書籍や映像(オープロジェクト制作)で発表。同じ長崎県の炭鉱島である池島にも足繁く通い、著作物ほかで拡散。また、幼少より地元東京の街歩きを趣味とし、ティープスボットや建築的な切り口で書籍や雑稿も多数。10年前からは都内各地でのガイドも行っている。
著作に(書籍)「軍艦島全景」「軍艦島入門」「軍艦島 奇跡の海上都市完全一周」「池島全景」「東京時層探検」「東西名品 昭和モダン建築案内」、(映像)軍艦島三部作、廃道三部作、「鉄道廃線浪漫」ほか多数。

記:中村 恭子