ダムカードをご存知ですか?
カードの大きさや掲載する情報項目などは、全国で統一したものにしており、おもて面はダムの写真、うら面はダムの形式や貯水池の容量・ダムを建設したときの技術、といった基本的な情報からちょっとマニアックな情報までを凝縮して載せています。
カードは、国土交通省と水資源機構の管理するダムのほか、一部の都道府県や発電事業者の管理するダムで作成し、ダムの管理事務所やその周辺施設で配布しています。
この国が発行しているダムカードを配布している施設が柏市内にあるのをご存知ですか?。
施設の名前は『北千葉導水路』、大堀川河口の「柏ふるさと公園」に隣接して「北千葉導水第二機場」と「北千葉導水ビジターセンター」があります。
ダムというとコンクリートで河川を堰き止めて造られた「黒部ダム」などが思い浮かびますが、北千葉導水路のダムカードは、国土交通省所管水資源開発施設(導水路)として国が作成・配布されています。
北千葉導水の役割
北千葉導水は、利根川の下流部と江戸川を結ぶ約28.5kmの導水路です。ダムカードに書かれている役割は(FWIと浄化用水)です。
F:洪水調節
手賀川・坂川流域は地盤が低く、台風などにより大雨が降ると利根川・江戸川の水位が、手賀川・坂川の水位より高くなってしまうため、浸水が多発していました。
その対策のため、印西市の北千葉揚排水機場で手賀川から利根川に排水、松戸の第二機場で坂川から江戸川に排水しています。
W:上水道、I:工業用水
江戸川の水が足りない時に、上水および工業用水として利根川の水を供給しています。
浄化用水
水質調査が始まった昭和47年以降日本一汚濁した湖として何年もの間ワースト1を続けていました。
北千葉導水は北千葉第二機場で揚水した利根川の水を大堀川の河口より手賀沼に放流し、利根川の水による希釈と滞留時間の短縮を図っています。
北千葉導水が手賀沼に与えた効果についてもう少し詳しく
手賀沼は昭和20年後半までは水泳場もあり、泳げる湖でした。
しかし、流域の都市化(特に柏市)が進み、生活用水が流入することにより水質の汚濁が進み、泳ぐことはもとより夏には藍藻類のアオコが大量発生する状況が継続していました。
アオコ
汚濁が進んだ湖沼等において藍藻が大量に増殖し水面を覆い尽くすほどになった状態、およびその藻類を指す。粒子状の藻体がただよって水面に青緑色の粉をまいたように見えることから、「青粉(あおこ)」と呼ばれるようになったと考えられる。独特の臭いがあり、発生場所や季節によって緑色の程度が異なる。甚だしいものは、ペンキに喩えられるほど色が濃くなる。(Wikipedia)
図は、手賀沼の水質の経年変化です。北千葉導水の本格運用が開始された平成12年より水質は大幅に改善しています。
また、北千葉導水の運用開始と同時に行われた手賀大橋の架け替えも浄化用水の効果に寄与していると思われます。
手賀沼の中央部には、昭和39年の手賀大橋の架橋時の両岸の埋め立てによる狭窄部がありました。これは、資材の不足から橋の長さを極力短くするためで、この狭窄部が下手賀沼へのスムーズな流れを妨いでいるとされていました。
しかし、新手賀大橋の架橋時に狭窄部は削られ、北千葉導水からの放流をスムーズに下流に導けるようになりました。
近年は水質の向上により、手賀沼ではトライアスロン大会も行われています。
北千葉導水ビジターセンターの見学
北千葉導水ビジターセンターは北千葉第二機場内にあり、「北千葉導水事業」の役割や手賀沼の自然環境などを紹介する施設です。
見学は無料で、北千葉導水の仕組みや調整池からの手賀沼への実際の放流や導水管からのポンプの稼働、施設案内のシネマ(約10分)などを見ることができます。
小中学生の研究学習などの来館者は年間1万5千名以上、敷地内は公園のようになっていて、ジョッギングや散歩をする人も見られます。
また、平成21年4月から、柏市の避難場所に指定されています。
記:中村 恭子