夏季句会 講評
皆様 家居の時間が長くなったためか、今回は、よく考えられた句が多かったように感じました。また、それぞれの方の個性がその方の俳句群に感じられ、その方を思いつつ読むことも出来楽しめました。皆様は、どんな思いで読まれましたか。 以下、私なりの講評を述べます。
天(1句)
青しぐれ一遍像の細き足 加行
作者は、布施にある時宗の善照寺の近くに住まい、日ごろから境内にある一遍像に親しんできている。そうした思いが自然に出ている佳句。私も、近年は法然、親鸞よりもはるかに強く一遍に惹かれる。すべてを捨て去り、遊行の旅の積み重ねで生涯を終えた一遍の姿と心が、「青しぐれ」と「細き足」の二語に集約されている。
地(2句)
散りてなお深紅に燃ゆる牡丹かな 康文
素直に、地に落ちた牡丹の花びらの紅色の美しさに感動して詠んだのであろう。「燃ゆる」と作らずに、{深紅に}「冴ゆる」 位に、サラリと言ってみてはどうだろうか。
捩花のけふひと巻を加へたる 清明
今、ちょうど芝生のあちこちに捩花が顔を出し始めている。作者が朝な夕なに、この優しい花をめでている様子が見えて好ましい。一日に一巻きを加える小さな成長を、読者は、寿ぐ気持ちになる。
筆者も最近、こんな句を詠んでみた。
捩花や蟻廻りつつ高みまで 房司
人(2句)
石蕗の溜まり水ゆくちぎれ雲 晃子
天と地の融合。きめ細かい観察が、微妙な動きと大景を共に捉え、佳句を生んでいる。蛇笏の「芋の露連山影を正しうす」を想った。
風を見ず真っ直ぐがよし夏燕 安分
「夏燕」って、簡単に詠めそうでいて、実は、難しい季語でしたねえ。しかし、本句は「夏+燕」の本質を巧みに捉えていますね。忖度やら安易な風読みの横行する今の世の中、、、。右顧左眄せず真っすぐにゆきたいという日頃の作者の心情が、燕に託されています。
秀句(3句)
多くの中から、下記の3句を選びました。
信州や奥山寺に9条の碑 湯治
今日だからこそ、9条が効いています。
若葉風通過新装清州橋 泰平
大川にかかる橋が、みんなお化粧直し出来て、本当に良かったですねえ。
証聴く教会堂に風薫る 桂子
コロナ禍の憂鬱を吹き飛ばす、正にこれぞ薫風、、、。
以上です。
講評:宇佐見房司